相続登記義務化から1年。データで見る中古住宅市場のリアルな変化

福山市の不動産市場、相続登記義務化から1年の動向と展望

こんにちは。

宅建マイスターの杉野です。

 

2024年4月に施行された「相続登記の義務化」から1年以上が経過し、不動産市場、特に中古戸建市場への影響に関心が集まっています。

この制度は、不動産の購入や売却をご検討されている皆様にとっても、無視できない重要な変化をもたらしています。

本稿では、実際の市場データを基に、現在の中古戸建市場で観測される主要なトレンドを分析し、今後の展望と考察を解説いたします。

 

1. はじめに:相続登記義務化とは

相続登記の義務化とは、不動産を相続した方が、その事実を知った時から3年以内に法務局へ登記申請を行うことを義務付ける制度です。

これまで任意であった手続きが必須となり、正当な理由なく怠った場合には過料が科される可能性もあります。

この制度は、所有者不明土地や空き家問題の解決に繋がる一方、個々の不動産取引においては、より複雑な権利関係や法律知識が求められる場面が増えることを意味します。

2. 市場への影響:福山市における現状分析

制度施行から1年が経過した現在、福山市の中古戸建市場が物件で溢れるといった急激な変化は見られません。

これには、相続発生から売却活動開始までに時間を要する「タイムラグ」や、3年間という「猶予期間」の存在が影響していると考えられます。

しかし、市場データをつぶさに分析すると、決して変化がないわけではなく、むしろ今後の市場動向を占う上で重要な、構造的変化の兆候が見られます。

3. データから読み解く、福山市中古戸建市場の3つの主要トレンド

以下では、実際の市場データを基に、現在観測されている3つの主要なトレンドについて解説します。

トレンド①:供給は横ばい、しかし需要は力強く増加 — 市場の需給バランスに変化

まず最も注目すべきは、市場の需給バランスに大きな変化が見られる点です。

一部では相続登記義務化による供給増が予想されていましたが、福山市のデータを見ると、新規売出件数は2023年度(23年4月~24年3月)の月平均約69件に対し、2024年度(24年4月~25年3月)は月平均約67件と、ほぼ横ばい、むしろ微減で推移しています。

これは、売却を急ぐ所有者がまだ限定的であることを示唆しています。

  • 福山市中古戸建 売出・成約件数の推移(月平均)

 2023年4月~2024年3月 | 2024年4月~2025年3月

 ▶新規売出件数 | 約69件 | 約67件(微減)

 ▶成約件数 | 約15件 | 約23件(増加)

 

このデータが示す最も重要なポイントは、「市場に出てくる物件の数が増えない中で、買いたい人が大幅に増えている」という市場の引き締まりです。

これにより、市場の在庫は減少傾向にあり、需給バランスは「売り手市場」へと傾きつつあると考えられます。

トレンド②:供給物件の多様化と市場価格の安定化

次に、市場の価格動向です。結論から言うと、中古住宅の平均成約価格は明確な下落傾向を示しています。

トレンド①で見たように全体の供給量は横ばいですが、その内訳として相続等を契機とした多様な物件が流通し始めていることが、価格に影響を与えていると考えられます。

  • 福山市中古戸建 平均成約価格の推移

 ▶2023年度: 約1626万円

 ▶2024年度: 約1444万円

1年間で平均価格が約180万円下落していることが分かります。

これは、個々の物件価値が下がったというよりも、比較的手頃な価格帯の物件が市場に増え、全体の平均値を押し下げている可能性が高いことを示唆しています。

買い手にとっては予算内で検討できる物件の選択肢が広がっている一方、物件の質を慎重に見極める必要性が高まっているとも言えるでしょう。

トレンド③:成約日数に見る「二極化」の進行

第三のトレンドが、市場の「二極化」です。

トレンド①で見たように市場が売り手優位に傾き、買い手間の競争が激しくなるほど、買い手はより慎重に物件を選別するようになります。

その結果、条件の良い物件とそうでない物件とで、売却期間に大きな差が生じています。

この事実は、成約日数の「平均値」と「中央値」の乖離から明確に読み取れます。

  • 成約日数のデータに見る二極化

 ▶中央値(※):約5~6ヶ月

 ▶平均値:約8~9ヶ月

※中央値:成約物件を期間が短い順に並べた時、ちょうど真ん中に位置する物件の売却期間

 

中央値が5~6ヶ月であるのに対し、平均値がそれよりも長いのは、一部の売却に時間のかかる物件が全体の数値を引き上げているためです。

これは、「条件の良い物件は競争の末、速やかに成約する」一方で、「そうでない物件は買い手から選ばれず、長期にわたり市場に留まる」という二極化した実態を如実に示しています。

4. 今後の市場との向き合い方:購入・売却をご検討の方へ

これらのトレンドを踏まえ、今後の市場とどう向き合うべきか、考察します。

 

  • 購入をご検討の方へ

市場が引き締まり、良い物件を巡る競争は激しくなっています。

信頼できる専門家と連携し、情報収集を密に行い、内覧から購入申し込みまで迅速に判断できる準備をしておくことが重要です。

ただし、焦りは禁物です。多様な物件の中から、将来的な価値も見据えた冷静な判断が求められます。

  • 売却をご検討の方へ

現在は売り手にとって比較的有利な市場環境と言えます。

しかし、「二極化」が進んでいることからも分かる通り、どんな物件でも高く早く売れるわけではありません。

買い手はより物件を厳しく見ています。適正な価格設定と、物件の魅力を最大限に伝える売却戦略が、成功の鍵を握ります。

5. 最後に:複雑な不動産取引こそ「宅建マイスター」へ

本稿では、相続登記義務化から1年が経過した福山市の中古住宅市場について、データに基づいた分析を行いました。

市場は、需要の増加と供給の多様化を背景に、新たな局面を迎えています。

このような変化の時代においては、感覚だけに頼るのではなく、客観的なデータと市況の深い理解に基づいた不動産戦略が不可欠です。

特に、空き家を含む相続不動産の問題は、法律や税金も絡む複雑なケースが少なくありません。

高度な専門知識と倫理観を併せ持つ「宅建マイスター」として、複雑な不動産取引においてもお客様の利益を守り、適正な取引が実現できるよう最後までサポートすることをお約束いたします。

豊富な経験と専門知識を基に、皆様一人ひとりの状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。

不動産の購入、売却、あるいは相続に関するご相談など、どのようなことでもお気軽にお問い合わせください。

〈査定相談専用フォーム〉

 

100坪超の敷地と広々177㎡の住空間でのびのび暮らす福山市坪生町の家

こんにちは。

宅建マイスターの杉野です。

 

本日は『坪生町五丁目・売戸建』掲載いたしました。

ハザードマップ警戒区域外で災害リスクが低く、駐車場4台以上完備しています

和室の掘りごたつやリビングの畳コーナーで心安らぐ空間

建物状況調査済みで、2階洋室の傾き、浴室乾燥機、IHクッキングヒーター、インターホン等に不具合があります。

詳しい物件情報は、こちらのページからご覧いただくことができます。

 

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【100坪超の敷地と広々177㎡の住空間でのびのび暮らす福山市坪生町の家】

→その他物件情報はこちらからご覧いただけます。

 

※物件情報は2025年6月12日現在のものです。すでに売約済みの場合にはご容赦くださいませ。

福山中古マンションウォッチ(2025年6月)

こんにちは。

宅建マイスターの杉野です。

 

福山市内の不動産動向に関心をお持ちの皆様へ、2025年6月1日時点で集計した2025年5月分の福山市中古マンション市場データについて、最新の速報値をご報告いたします。

先月は価格、特に中央価格の大きな下落が見られましたが、5月はその動きに変化があったのでしょうか。早速、詳しく見ていきましょう。

売却や購入をご検討される際の参考情報として、ぜひご活用ください。

【築年帯別】福山市中古マンションの市場動向(2025年5月)

まず、今月の市場を築年数ごとの詳細データで見ていきましょう。

全体の平均値だけでは見えない、価格や売却期間の二極化が鮮明になっています。

主なポイント(2025年5月)

  • 価格の二極化が顕著に:
    • 築15~25年の物件は価格が大きく上昇(+5.0%~+6.3%)しており、市場での需要の高さがうかがえます。
    • 一方で、築40年以上の物件は前月比-6.7%と大きく下落しており、築年数による価格動向の差が明確です。
  • 在庫日数の変動:
    • 築5~10年の物件は在庫日数が前月比-53.8%と大幅に短縮しました。これは、該当件数が5件と少ない中で、5月に3件の新規売出物件が供給されたことが主な要因です。市場に登場したばかりの物件(在庫日数が短い)が平均値を大きく引き下げた形となります。
    • 築25~30年の物件は在庫日数が+20.5%と、売却期間が長引く傾向にあります。
  • 市場の物件構成:
    • 売り出し中の物件のうち、築5年未満(20%)築30~35年(27%)の物件で約半数を占めており、市場の供給が特定の築年帯に集中していることがわかります。

 

 

 

年代 在庫日数(日)

平均売出価格

(万円)

70㎡換算価格

(万円)

物件数
全体平均 259.47 2313.79 2261.56 154
5年未満 198.84 4293.39 4192.08 31
5~10年未満 190.00 3192.00 2841.65 5
10~15年未満 216.09 3532.64 3210.88 11
15~20年未満 294.69 3058.00 2181.46 13
20~25年未満 216.40 2380.00 2217.57 10
25~30年未満 304.33 1860.20 1730.71 15
30~35年未満 253.56 1185.00 1441.14 41
35~40年未満 329.63 1214.88 1460.19 16
40年以上 353.17 744.08 821.00 12

【全体】売出価格(平均・中央)・在庫日数の推移(過去1年間)

次に、福山市全体の中古マンション市場の大きな流れです。

  • 全体平均価格(70㎡換算): 2,262万円 (前月比+0.04%)。先月の下落から一転し、ほぼ横ばいで推移。価格の下げ止まり感が見られます。
  • 全体中央価格(70㎡換算): 1,928万円 (前月比+0.9%)。先月大きく下落した中央価格は、今月わずかに反発しました。
  • 平均在庫日数: 259日 (前月比+8日)。売却までにかかる期間はさらに長期化しています。

 

 

 

在庫日数 70㎡換算(平均) 70㎡換算(中央)
6月 219

1988

1847
7月 235

2084

1906
8月 241

2007

1753
9月 251

2061

1759
10月 261

2168

1935
11月 250

2259

1991
12月 256

2300

2026
2025年1月 254

2321

2125
2月 243

2297

2122

3月

248

2310

2129
4月 251

2261

1910
5月 259

2262

1928

(70㎡換算価格は小数点第1位を四捨五入して表示)

【供給】新規売出・掲載終了件数の動向

最後に、市場に出ている物件数(供給)の動きです。

  • 全体流通件数: 154件 (前月比+3 件)。市場に出回っている物件総数はさらに増加し、過去1年超で最多を更新しました。
  • 新規売出件数: 21件 (前月比-3 件)
  • 掲載終了件数: 19件 (前月比-2 件)

 

 

流通

件数

掲載

終了

新規
6月 147 19 29
7月 147 25 23
8月 147 19 17
9月 140 26 18
10月 140 19 17
11月 136 20 16
12月 134 26 21
2025年1月 130 25 20
2月 141 16 24
3月 145 21 26
4月 151 21 24
5月 154 19 21

まとめ|2025年4月市場のポイント

2025年5月の福山市中古マンション市場を分析した結果、これまで以上に市場の多角的な理解が求められる状況であることが明らかになりました。

1.市場の「二極化」を示す価格の乖離

 5月の市場における最も大きな特徴は、平均価格と中央価格の乖離が継続している点です。平均価格は横ばいで下げ止まったように見えますが、市場のリアルな中心を示す中央価格は依然として低い水準にあります。これは、一部の高価格帯物件が平均値を支える一方で、市場の大多数を占める中間層の物件は価格調整の圧力にさらされている「二極化」が進行していることを強く示唆しています。

2.売却期間の長期化と豊富な物件供給

 平均在庫日数は259日と増加を続けており、売却の長期化が定着しつつあります。同時に、市場全体の流通物件数は154件と過去1年超で最多を更新しました。これは、買い手にとっては選択肢が豊富で、じっくり比較検討できる「買い手優位」の市場環境が続いていることを意味します。

3.特定の築年帯に集中する供給

 市場の供給は、築5年未満の新しい物件(20%)築30~35年の物件(27%)に集中しています。このことも価格の二極化を後押しする一因となっており、ご自身の物件や探している物件がどの層に属するのかを意識することが重要です。

【売却をご検討中の方へ】

「全体の平均価格は下げ止まった」という情報だけで安心するのは危険です。

ご自身の物件が、価格を維持する層と調整局面にある層のどちらに属するのかを客観的に見極める必要があります。

特に中間層の物件を売却する場合、中央価格の動向や、競合となる類似物件の価格をよりシビアに分析し、戦略的な価格設定を行うことが、豊富な在庫の中で買い手に選ばれるための鍵となります。

 

【購入をご検討中の方へ】

平均価格と中央価格の乖離は、購入を検討する方にとってはチャンスです。

平均価格だけを見ると高く感じるかもしれませんが、中央価格の動向は「現実的に検討できる価格帯の物件が増えている」ことを示しています。

市場に豊富な選択肢がある今、表面的な平均値に惑わされず、ご自身の希望する築年帯やエリアの動向を深く掘り下げることで、価値ある物件を適正価格で見つけられる可能性が高い時期と言えるでしょう。

 

 

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