プロは『議事録』まで読み込む!マンション売却で失敗しない調査術

こんにちは。

福山市の宅建マイスター、杉野です。

 

中古マンションを売却する際、管理会社から取得する「重要事項調査報告書」は非常に重要な書類です。

ここに「管理費等の変更予定なし」と書かれていれば、誰もが安心するでしょう。

しかし、もしその記載だけを信じて取引を進めた結果、引き渡し直後に買主様から「話が違う!」とクレームが入ったら…?

本日は、そんな「隠れたリスク」から売主様と買主様を守る、プロの調査術についてお話しします。

この記事は、不動産流通の専門誌「アットホームタイム8月号」に掲載された裁判事例を参考に、私の実務経験を交えて解説いたします。

【裁判事例】引き渡し直後に管理費が値上げ!一体誰の責任?

最近、まさにこのようなトラブルが裁判にまで発展した事例がありました。

  • 状況: 不動産会社が取得した調査報告書には「管理費等の変更予定なし」と記載。その通りに買主へ説明。

  • 現実: 引き渡しの直後、管理費と修繕積立金が大幅に値上げ。

  • 買主の主張: 「値上げ予定があったのに説明しなかった!」として、売主と不動産会社を提訴。

驚くべきことに、裁判所は「報告書に基づいて説明した業者に、法的な説明義務違反はない」として、不動産会社の責任を認めませんでした。

法的にはセーフでも、買主様は納得いかず、後味の悪い取引になってしまいました。

私たち不動産のプロは、法的な義務を果たすだけでなく、このような「感情的なトラブル」をも未然に防ぐ責任があると考えています。

 

アットホームタイム8月号 No.524より引用

なぜ調査報告書だけでは不十分なのか?「予定なし」の裏側

実は、管理会社は「総会で正式に決議されるまで」は、たとえ理事会で値上げの議論が進行していても、調査報告書には「予定なし」と記載するのが一般的です。

つまり、水面下で値上げの検討が始まっていても、その「兆候」は調査報告書には現れないのです。

ここに、トラブルの種が潜んでいます。

【私の実体験】議事録から「未来のリスク」を読み解き、トラブルを未然に防いだ話

先日、私が担当したお客様の事例です。やはり、管理会社から取得した重要事項調査報告書には「修繕積立金の変更予定なし」と記載されていました。

しかし、私は念のため、管理組合の「理事会の議事録」まで取り寄せ、内容を精査しました。すると、そこには「将来的な積立金の値上げは避けられない」という、将来の値上げを示唆する議論の記録がはっきりと残っていたのです。

私は買主様に対し、正直にこうお伝えしました。

「公式な報告書は『管理費等の変更予定なし』ですが、議事録を見る限り、近い将来に値上げされる可能性が高いです。その点もご承知おきください。」

買主様は、その透明性の高い説明に大変納得され、「正直に教えてくれてありがとう」と、安心して契約に進んでくださいました。

もちろん、引き渡し後にトラブルは一切起きていません。

まとめ:不動産取引で本当に大切なこと

▶不動産会社の方へ:調査の「タイミング」が成否を分ける

重要事項調査報告書の取得タイミングについてです。

この報告書は数万円の費用がかかるため、「契約が決まるまでは取り寄せない」という会社があると聞きます。しかし、その判断には大きなリスクが伴います。

契約直前に取得した資料から、大規模修繕の一時金徴収など、買主様の判断に影響する思わぬ事実が判明したらどうでしょうか。また、契約間際では、たとえ資料を入手しても十分に読み込み、お客様に説明する時間がありません。これではプロの仕事とは言えません。

私たち不動産会社は、極力、売主様と媒介契約を締結したタイミングで速やかに調査報告書を取得するべきです。これが、リスク管理の第一歩です。

さらに、本記事で述べたように、報告書だけでなく「直近の議事録」「長期修繕計画書」まで精査することが求められます。特に長期修繕計画書は、その策定・改定時期を確認し、昨今の物価高や人件費上昇を鑑みて、計画が実態にそぐわないものになっていないかを見極める視点が不可欠です。私たちの仕事は、単に情報を流すことではなく、その背景を読み解き、未来のリスクを予見することです。

▶売主様へ:良い不動産会社の見極め方

安心して大切な資産を売却するためには、このような深い調査を実践してくれる不動産会社を選ぶことが重要です。

「調査報告書はいつ取得しますか?」「議事録や長期修繕計画書まで確認してくれますか?」と、ぜひ担当者に質問してみてください。その回答に、会社の姿勢が現れます。

▶買主様へ:安全な購入を目指すには

中古マンションの購入は、お部屋の見た目の良さや立地だけで決めてはいけません。

そのマンションが、将来にわたって資産価値を維持できるかどうかは、「管理が健全かどうか」に大きく左右されます。

その健全性をチェックする上で、特に重要な資料が「議事録」「長期修繕計画書」です。

  • 議事録では、修繕積立金の値上げや、大規模修繕の計画が順調に進んでいるか、また住民間のトラブルなど、将来のリスクになりそうな問題が起きていないかを確認します。

  • 長期修繕計画書では、計画の策定・更新時期を必ず確認しましょう。もし何十年も前の計画のままだと、昨今の物価高や人件費の上昇が全く反映されておらず、将来、修繕積立金が大幅に不足して一時金が必要になる、といった事態に陥る可能性があります。

こういったマンションの「健康状態」は、これらの資料に記録されています。

気になる物件が見つかったら、必ず担当の不動産会社経由で取り寄せてもらい、内容を確認しましょう。誠実な担当者であれば、快く対応してくれるはずです。

 

当社は、表面的な情報だけでなく、その裏にある背景まで読み解き、すべての関係者が心から納得できる取引を目指しています。

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