【マンションウォッチ】成約移動平均が示す「価格の底打ち」。9月以降の秋商戦に向けた戦略
朝夕の風に少しずつ秋の気配が感じられる季節となってまいりました。
さて、毎月恒例の「福山マンションウォッチ」、今回は2026年8月度(9月1日集計)の最新市場データをお届けします。
春先から続いた在庫過多と激しい価格調整を経て、前月(7月)には月間30件もの掲載終了・成約による「滞留在庫の一掃」が行われました。
8月度は、新たに導入した長短期の「成約価格移動平均(12ヶ月/3ヶ月)」の分析から、約10ヶ月に及んだ下落トレンドについに「底打ち」のサインがはっきりと確認できました。
この底打ちの兆候を受けて、本格的な秋の需要期(9月〜11月)に向けて市場がどのように変化していくでしょうか。
詳細なデータをもとに徹底解説します。

1.【全体サマリー】2026年8月度の主要データ
まずは当事務所で毎月定点観測している全体推移データをご覧ください。
- 平均在庫日数:308日📉(前月比-19日)
- 70㎡換算 平均価格:2,178万円📈(前月比+1.84%)
- 70㎡換算 中央価格:1,834万円📉(前月比-1.36%)
- 流通物件件数(在庫):157件📈(前月比+5件)
- 掲載終了件数(成約等):18件📉(前月比-12件)
- 新規売出件数:22件📈(前月比+8件)
- 平均 vs 中央 乖離幅:344万円📈(前月比+65万円)過去最大級
- 70㎡換算 単月成約平均:1,996万円📈(前月比+251万円)
- 成約12ヶ月移動平均:1,881万円 ➡(前月比±0万円)
- 成約3ヶ月移動平均:1,876万円📈(前月比+54万円)
- 価格改定件数:10件📉(前月比-4件)
- 値下げ単価:98万円📉(前月比-41万円)


2. 成約移動平均の分析:見えてきた「成約価格の底打ち」
8月度から新たに取り入れた重要指標が、「成約価格の12ヶ月/3ヶ月移動平均」です。
単月の成約平均(70㎡換算)は、その月に高額物件が決まったか、割安な築古物件が多かったかによって数百万円単位で乱高下します(8月は高額物件の成約で1,996万円へ急上昇しました)。
この月ごとのブレを平滑化し、市場の実勢トレンドを浮き彫りにするのが移動平均線です。
【成約トレンドの推移(70㎡換算)】
- 2025年10月:2,126万円(ピーク)
│
▼(約10ヶ月にわたる長期下落局面)
- 2026年 5月: 3ヶ月移動平均: 1,782万円(短期の底打ち)
- 2026年 6月: 3ヶ月移動平均:1,800万円 ── 12ヶ月 1,891万円
- 2026年 7月: 3ヶ月移動平均:1,822万円 ── 12ヶ月 1,881万円
- 2026年 8月: 3ヶ月移動平均:1,876万円 ── 12ヶ月 1,881万円(横ばい・底打ち)
① 長期トレンド(12ヶ月移動平均):下げ止まりの「底打ち」
2025年10月の2,126万円をピークに下がり続けていた12ヶ月移動平均は、7月の1,881万円から8月も「1,881万円(前月比±0万円)」と完全に横ばいになりました。10ヶ月近く続いた下落トレンドがついにストップし、底を打った形です。
② 短期トレンド(3ヶ月移動平均):5月を底に3ヶ月連続の反発
一方、直近3ヶ月の動きを反映する短期ラインは、2026年5月の1,782万円を底に、6月(1,800万円)→ 7月(1,822万円)→ 8月(1,876万円)と反発を見せています。
長期ライン(1,881万円)と短期ライン(1,876万円)の差はわずか5万円にまで縮まり、まさに相場の反転シグナルを形成しつつあります。
③ 実勢価格帯の収斂(1,830万〜1,880万円)
現在、「売出中央価格(1,834万円)」と「成約3ヶ月移動平均(1,876万円)」、「成約12ヶ月移動平均(1,881万円)」の3つが、1,850万円前後の非常に狭いレンジに収斂しています。
これは、福山市における買い手と売り手の合意形成ラインが「1,850万円前後」にしっかりと固まり、相場の土台が形成されたことを証明しています。

3. 在庫日数は308日へ改善も、広がる「価格ギャップ344万円」
8月度のもう一つの大きな変化は、過去最長を記録していた平均在庫日数(327日)が、308日(前月比-19日)へと反転短縮した点です。
■ なぜ滞留日数が短縮したのか?
その立役者は、長期間動かなかった物件の売主様による「大幅な歩み寄り」です。
- 販売期間542日の長期滞留物件(西部エリア)が、600万円の値下げによって成約。
- 販売期間379日の築浅物件(中心部)が、3,500万円で決着。
1年以上滞留していた物件が成約したことに加え、これまで目詰まりが酷かった「築10〜15年未満」の在庫日数が414日→295日(-28.8%)へ、「築15〜20年未満」が335日→207日(-38.3%)へと大きく改善しました。
■ 警戒すべき「344万円の価格ギャップ」
ただし、手放しで市場回復と喜ぶことはできません。
8月度は、70㎡換算の「平均価格(2,178万円)」が上昇したのに対し、「中央価格(1,834万円)」は下落し、その差(ギャップ)は過去最大級の344万円にまで広がりました。
中央価格の下落は、実際の買い手が1,800万円前後の現実的な実需物件しか買っていない現実を示しています。
それにもかかわらず平均価格が上がっているのは、相場全体が上がったのではなく、「築5年未満(平均価格5,063万円/在庫22件)」といった超高額帯が売れ残って平均を吊り上げている構造的な歪みによるものです。
4. 価格改定の沈静化:嵐のあとの様子見ムード
6月(値下げ単価172万円)、7月(値下げ単価139万円)と続いた激しい損切りラッシュですが、8月度は価格改定件数が10件(改定率6.4%)、値下げ単価は98万円と大幅に沈静化しました。
お盆休みの時期特有の様子見姿勢に加え、「これ以上の値下げは避けたい」という売主様の心理的抵抗線が現れています。
春から夏にかけての価格競争が一服し、市場はいったん呼吸を整えた状態です。
5. まとめ:これから秋の市場に臨む戦略
2026年8月度は、これまでの長い下落トンネルを抜け、「実勢価格の底打ちと反発の兆候」が確認された月となりました。
- 売主様へ:
市場のリアルな重心は「成約移動平均1,881万円/売出中央値1,834万円」にあります。秋の需要期はライバル物件も増えます。選ばれるためには、底値ライン(1,850万〜1,880万円)を意識した現実的な価格設定と、物件の強みを際立たせる露出戦略が必須です。
- 買主様へ:
成約データが示す通り、実勢相場の底値圏が固まりつつあります。条件の良い適正価格物件は足が早くなる傾向があります。一方で、平均在庫日数が300日を超えている長期滞留物件に対しては、データに基づいた合理的な価格交渉が通りやすい状況が続いています。秋の新規物件と既存の滞留物件をじっくり見比べながら、賢い選択をしていきましょう。
秋の需要期に入り、市況が「反発・活性化」へ向かうのか、それとも「高額在庫の滞留による再度の膠着」へ向かうのか。
9月以降の動きを今後もどこよりも早くウォッチし、正確なデータとともにお届けしてまいります。
福山市内の中古マンションのご売却・ご購入に関するご相談は、ぜひ杉野伸不動産事務所までお気軽にお寄せください。


