【2025年上半期総括】マンション「売れ残り時代」の売却戦略。データで読み解く福山の今

はじめに

こんにちは。

福山市の宅建マイスター、杉野です。

 

お盆休みを故郷で過ごされている方、ご自宅でゆっくりされている方、様々かと存じますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

さて、2025年上半期が終了し、1ヶ月が経過しました。

この度、上半期全体の詳細なデータを精査し、福山市中古マンション市場の構造的な変化について分析がまとまりましたので、この機会にご報告いたします。

現在の市場は、「マンション売れ残り時代」と呼ぶべき局面にあります。しかし、これは悲観するだけではありません。

この時代を乗りこなし、ご所有の資産価値を最大化するための「売却戦略」があります。

 

この記事を読めば、なぜそのような状況になったのか、そしてこの時代に「選ばれる」ための具体的な方法がわかります。

1. なぜ「売れ残り時代」が到来したのか?

現在の市場を理解する鍵は、深刻な需給バランスの崩壊と、その背景にある構造的な問題にあります。

まず、四半期ごとの成約件数(需要)を見ると、年間を通じて概ね20~30件台で安定しています。

つまり、中古マンションを購入する人の数は、大きくは増えていません。

一方で、供給側のデータを見てみましょう。

四半期ごとの新規売出件数は、2025年第1四半期に72件、第2四半期には71件と、高い水準で物件が市場に供給され続けています 。

この「需要は一定なのに、供給は増え続ける」という構造的なアンバランスが、市場の在庫を急速に積み上げています。

月次の在庫件数の推移を見ると、そのスピードは一目瞭然です。2025年1月には130件だった在庫数は、月を追うごとに増加し、7月には162件と、この直近1.5年間で最多を記録しました。

そして、この供給が増え続ける根本的な原因は、増え続けるマンションストック数そのものにあります。

以前のブログ記事(参考記事:2030年、福山市のマンションは4割が老朽化?【データで見る不動産】)でも指摘した通り、福山市内では新規マンションの供給が続く一方で、古いマンションの除却(解体)は進んでいません。

これは、市場に存在する中古マンションの総量が、単純に積み上がり続けていることを意味します。

この供給過多の状態が、売主様間の競争を激化させている。これが「マンション売れ残り時代」の正体です。

2. 競争激化がもたらす「2つのコスト」

この厳しい市場環境は、売主様にとって具体的な「コスト」として、年々段階的に増加しています。

 

コスト①:時間的コスト(見過ごせない「維持費」の増大)

競争が激しいため、買い手が見つかるまでの時間は確実に長くなっています。

同時期(4月~6月期)の平均成約期間を比較すると、その変化は一目瞭然です。

  • 2023年 4月~6月期: 66.0日

  • 2024年 4月~6月期: 159.7日

  • 2025年 4月~6月期: 202.1日

わずか2年で、売却にかかる期間は約3倍にまで長期化しています。

 

この「売却期間の長さ」は、単に時間がかかるというだけではありません。

売却が完了するまでの間も、所有者である売主様には管理費・修繕積立金・駐車場代といった「維持費」が毎月発生し続けます。

例えば、これらの月々の維持費が合計で3万円だったと仮定して、売却までにかかる総コストを計算してみましょう。

  • 2023年(成約期間 約2.2ヶ月): 3万円 × 2.2ヶ月 = 約6.6万円

  • 2025年(成約期間 約6.7ヶ月): 3万円 × 6.7ヶ月 = 約20.1万円

売却期間が延びたことで、売主様が負担する維持費の総額は、2年間で約13.5万円も増加したことになります。これは、決して無視できない「時間的コスト」です。

コスト②:価格的コスト(拡大する値下げ率)

当初の希望価格のまま売却できるケースも、年々少なくなっています。

同じく4月~6月期の、当初売出価格からの平均値下げ率を見てみましょう。

  • 2023年 4月~6月期: 3.3%

  • 2024年 4月~6月期: 7.6%

  • 2025年 4月~6月期: 9.5%

こちらも2年間で約3倍に拡大しており、現在では当初の希望価格から約1割近い価格調整(値引き)を経て、ようやく成約に至っているのが標準的な市場であることを示しています。

【本レポートのデータについて】

※本レポートにおける成約価格や成約期間などの成約事例データは、西日本不動産流通機構(レインズ)等に登録された物件情報を基に集計しています。市場には登録されていない成約事例も存在するため、全ての取引を網羅したものではありません。しかし、市場全体の大きな傾向を把握するには十分なデータであると考えております。

3.【結論】「マンション売れ残り時代」を乗りこなす、3つの売却戦略

以上の分析を踏まえ、この厳しい市場を乗りこなし、ご所有の資産価値を最大化するための戦略を3つご提案します。

戦略①:ご自身の物件の「立ち位置」を客観的に知る

まず、ご所有のマンションが、豊富な在庫の中で買い手から「選ばれる」魅力を持つ物件なのか、それとも厳しい競争にさらされる物件なのか、その立ち位置を客観的に把握することが全てのスタートです。

周辺の「売出価格」ではなく、実際に取引されている「成約価格」のデータを基に、現実的な価値を把握する必要があります。

戦略②:スタートラインの最適化 ―「選ばれる」ための価格設定

豊富な選択肢を持つ買い手から「選ばれる」ためには、売り出し価格の設定が最も重要です。

競争が激しいカテゴリーに属する場合、最初から成約価格に近い価格設定を行うことで、買い手の注目を集め、結果として「時間的コスト」と「価格的コスト」を最小限に抑えることができます。

戦略③:「値下げ」を戦略的に活用する

現在の市場において、値下げは失敗ではなく、買い手の関心を惹きつけ、交渉のテーブルに着かせるための有効な「戦術」です。

例えば、「内覧が〇件入らなかったら、〇週間後に〇万円の価格調整を行う」といったプランを事前に立てておくことで、計画的に売却活動を進めることができます。

 

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福山市の中古マンション市場は、物件の価値が厳しく選別される「二極化時代」から、需給バランスが崩れた「売れ残り時代」へと移行しつつあります。

この厳しい市場環境を乗りこなすためには、正確なデータに基づいた専門家の視点が不可欠です。

ご自身の資産を最大限に活かすためにも、ぜひ一度、宅建マイスターの杉野にご相談ください。

 

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