【前編】福山市の中古住宅、価格下落の真相。データが示す「中心部から郊外へ」静かなる大移動

こんにちは。

福山市の宅建マイスター、杉野です。

 

さて、現在の福山市の中古住宅市場で起きている、「取引件数は1.5倍に増える活況ぶりなのに、平均価格は逆に約180万円も下落している」という、一見すると矛盾した現象について、皆様はどのようにお考えでしょうか。

 

今回の【前編】では、このパラドックスを解き明かす鍵となる「購入者たちの静かなる大移動」に焦点を当て、データからその実態を解き明かしていきます。

 

前回の記事『相続登記義務化から1年。データで見る中古住宅市場のリアルな変化』

1.【出発点】求められる「理想の暮らし」のサイズ

全ての物語は、人々のシンプルな願望から始まります。

新築住宅の価格高騰や物価上昇を背景に、中古住宅市場に目を向けたファミリー層。

彼らが求めるのは、新築で叶えたかったであろう「ゆとりのある暮らし」です。

その結果、市場では「広い建物(100㎡以上)」と、それを支える「広い土地(150㎡以上)」への需要が、データで明確に示されるほど高まっています。

 

データで見る「広さ」への需要 2023年度 2024年度 増加率
建物面積100㎡以上150㎡未満

78件

142件

+82%

土地面積150㎡以上

136件

216件

+59%

 

 

ファミリー層に最適な「100㎡~150㎡」の建物や、「150㎡以上」の広い土地を持つ物件の成約が、市場全体の増加率(+48%)を大きく上回って増加しています。

2.【必然の選択】エリア別データが示す「中心部から郊外へ」の明確な流れ

では、「広い土地に建つ、広い家」という理想の住まいは、福山市のどこにあるのでしょうか。

ここで、今回の「エリア別の地価(坪単価)」データが、購入者の行動を雄弁に物語ります。

 

エリア

2024年度

平均坪単価

2024年度

成約件数

成約件数増加率

(前年比)

中部

35.0万円

15件

-25%

南部

33.6万円

19件

0%

東部

21.1万円

63件

+43%

西部

14.2万円

69件

+123%

北部

9.9万円

106件

+51%

 

地価が高く、坪単価が30万円を超える中部・南部エリアでは、成約件数が停滞、あるいは減少しています。

一方で、地価が手頃な西部・北部エリアの成約件数が爆発的に増加しているのです。

3.【決定的証拠】価格帯データが示す「市場の重心」の変化

そして、この一連の動きを最終的に証明するのが、「どの価格帯の物件が売れているか」というデータです。

 

成約価格帯 2023年度 2024年度 増加率
1500万円未満 97件 155件 +60%
1500万円以上 87件 117件 +34%
市場全体 184件 272件 +48%

 

ご覧の通り、市場の成長を牽引しているのは、明らかに「1500万円未満」の価格帯です。

この価格帯の取引は+60%という、市場全体の増加率(+48%)を大きく上回る勢いで増加しています。

 

この3つのデータを重ね合わせることで、購入者の行動原理が明確になります。

 

「同じ予算なら、少しでもコストパフォーマンスの良い選択をしたい」

 

地価の高い中心部を避け、坪単価が半分以下である郊外の西部・北部エリアを選ぶことで、購入者は「広い土地」と「広い家」という理想の暮らしを手に入れています。

つまり、平均価格の下落は、個々の家の価値が下がったのではなく、コストパフォーマンスを追求する人々が、価格が手頃な郊外エリアの物件を活発に取引した結果、市場の取引の重心が完全にシフトしたことによる、必然の帰結だったのです。

【後編へ続く】

さて、【前編】では「郊外シフト」という大きな人の流れが、データによって証明されました。

しかし、この活況な市場の裏側で、全ての物件が順調に売れているわけではありません。

次回の【後編】では、最新の「成約日数」と「値下げ率」のデータから、物件ごとに成約までの道のりに差が生まれている、市場のもう一つの現実に迫ります。

どうぞご期待ください。

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