【マンションウォッチ】「成約」と「売却断念」の残酷な分断が始まった
投稿日:2025.11.08
こんにちは。
福山市の宅建マイスター、杉野です。
11月に入り、日増しに秋が深まってまいりました。
さて、今月も2025年10月度(11月1日集計)の福山市中古マンション市場の動向を、「マンションウォッチ」としてご報告いたします。
先月のブログ『在庫日数は過去最長の274日へ。しかし、その裏で起きている“ある変化”とは』では、平均在庫日数が274日と過去最長を記録する一方で、成約物件(137日)と非成約物件(228日)の間に「二極化」が起きていることをご報告しました。
今月、その平均在庫日数は277日と、さらに過去最長を更新しました。
しかし、その水面下では、先月の「二極化」が、もはや「分断」と呼ぶべき、さらに残酷な現実へと進化しています。今回は、この市場の「分断」の実態を、データから徹底的に解説します。

1.【全体サマリー】2025年10月の主要データ
まずは、10月度の主要な数値です。1年前のデータ(2024年10月)と比較することで、市場が抱える「矛盾」が見えてきます。
|
指標 |
2024年10月 (前年) |
2025年10月 (当月) |
前年比 |
|
平均在庫日数 |
261日 |
277日 |
+16日 悪化 |
|
70㎡平均価格 |
2,168万円 |
2,294万円 |
+5.8% 📈 |
|
70㎡中央価格 |
1,935万円 |
1,942万円 |
+0.36% → |
|
流通物件数 |
140件 |
156件 |
+11.4% 増加 |
|
価格改定率 |
13.6% |
8.3% |
-5.3pt 減少 |


2.【核心】平均価格(+5.8%)の“幻想”と、中央価格(+0.36%)の“現実”
10月の市場を読み解く最大の鍵は、「平均価格」と「中央価格」の壊滅的な乖離です。
- 平均価格は、1年で+5.8%と大きく上昇しています。
- しかし、市場の“ど真ん中”の実態を示す中央価格は、1年で+0.36%と、全く上昇していません。
これは、「一部の築浅・高価格帯の物件だけが値上がりし、市場の大半を占めるその他の中間層・低価格帯の物件は、1年前から全く値上がりしていない」という事実を決定づけています。
しかし、この「平均価格+5.8%」というニュースが、市場に“悪循環”を生み出しています。
3. なぜ市場は停滞しているのか?:「価格改定率8.3%」の罠
市場の現実は、1年前より「売れにくく(在庫日数+16日)」「競合も多い(在庫+11.4%)」という厳しいものです。
本来であれば、売主様は価格を調整(値下げ)して買い手を探す動きが活発になるはずです。
しかし、データはその逆を示しています。価格改定率は、1年前の13.6%から8.3%へと激減しました。
これは、「平均価格が上がっている」というニュースに影響された売主様が、「自分の物件も高く売れるはずだ」と期待し、価格調整をためらっている可能性を強く示唆します。
4.【最重要】その結果、起きたこと ―「108日」vs「291日」という残酷な分断
この売主様の「ためらい」が招いた結末は、あまりにも残酷なものでした。
10月に市場から退出した物件のデータを分析すると、その全てが分かります。
- 【成約した物件】の平均販売日数:108日(約3.5ヶ月)
- 【成約以外で掲載終了した物件】の平均日数:291日(約9.5ヶ月)
先月(成約137日 vs 成約以外228日)と比較しても、その格差は大きく広がりました。
- 「選ばれる物件」は、137日 → 108日へと、さらに約1ヶ月も早く売れるようになりました。買い手は、適正価格の優良物件には即決しています。
- 「選ばれない物件」は、228日 → 291日へと、さらに2ヶ月以上も長く市場に放置された末、売却を断念(掲載終了)しています。
「平均価格の上昇」という“幻想”に期待して価格調整を怠った物件が、売れ残り、市場の“現実”(中央価格の横ばい)を受け入れて適正価格を提示した物件だけが、早期成約を掴んでいるのです。
5 まとめ|売主様が取るべき戦略
10月の市場は、この1年間で最も重要な「教訓」を示した月でした。 それは、「平均価格+5.8%」という表面的なニュースが、いかに危険な“幻想”であるかという事実です。
この“幻想”が、「自分の物件も高く売れるはずだ」という期待感を生み、市場の現実(中央価格は横ばい)から目をそらさせました。 その結果が、「価格改定率の低下(8.3%)」という、売主様の“価格調整のためらい”です。
市場が停滞する中、この「ためらい」こそが、 【108日での早期成約】と【291日での売却断念】 という残酷なまでの結果の差を生み出す、最大の分岐点となっています。
【売主様へ】
今、問われているのは「平均価格という幻想」を追うか、「中央価格と成約日数という現実」に向き合うか、という冷静な判断力です。「277日」という全体の平均値は、この“幻想”と“現実”が混在した結果に過ぎません。
ご自身の資産価値を最大化する「現実的な」戦略について、ぜひ一度、宅建マイスターにご相談ください。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
売却のご用命、査定のご相談、各種お問い合わせはこちらからどうぞ。



