【後編】行方不明の隣地所有者を探し出せ!事前調査と専門家連携で難問を解決するプロの技

【後編】行方不明の隣地所有者を探し出せ!事前調査と専門家連携で難問を解決するプロの技

 

【前編】では、安全な不動産取引を実現するために「査定段階での隣接地所有者調査」がいかに重要かをお伝えしました。

 

▼前編記事はこちら

 「“丸投げ”測量はもうやめませんか? 契約解除リスクを激減させる「隣接地調査」というプロの仕事」

https://www.shin-re.jp/blog/6627

 

後編では、この事前調査によって実際に困難な状況を乗り越えた実例をご紹介し、専門家との連携のポイントを具体的に解説します。

 

ケーススタディ1:50年前の登記名義人。空き家の隣地所有者を探し出せ!

 

ある土地の査定依頼を受け、いつものように隣接地を調査したところ、1つの土地の登記情報が50年以上も前から変更されていないことが判明しました。現地はすでに空き家であり、書留郵便で送った手紙は「宛所訪ね無し」で返送されてきました。

【解決へのアプローチ】

  1. 売主様へのヒアリング: 以上の情報を踏まえ、売主様に隣地の方について伺ったところ、「近隣の方が連絡先を知っているかもしれない」という情報を得ることができました。
  2. 近隣からの情報収集: 近隣の方のご協力により、無事に所有者様との連絡を取り次いでいただけることになりました。
  3. ご本人との直接対話: 電話でお話ししたところ、所有者様ご本人はご健在で、高齢者施設に入所されていることが判明しました。親族が他の地域に住んでいるので、そちらと連絡を取っていただきたいという事情も知ることが出来ました。
  4. 土地家屋調査士との情報共有: これらの情報をご本人了承のうえで、土地家屋調査士と共有。その結果、実際の境界立会いは代理人が行うことになりましたが、そこに至るまでの手続きは非常にスムーズに進み、無事に境界を確定させることができました。

 

このケースでは、近隣の方々の協力という幸運もありましたが、それも元をたどれば査定段階で調査に着手し、早めに問題の芽を発見できたからに他なりません。

 

ケーススタディ2:所有者不明、情報ゼロ。行政を動かし解決へ

 

別の案件では、隣接地所有者が行方不明で、近隣住民からも一切情報が得られないという、さらに困難な状況に直面しました。

【解決へのアプローチ】

  1. 土地家屋調査士による職務上請求: まずは専門家である土地家屋調査士に依頼し、職務上請求で住民票の写し等を取得してもらいましたが、それでも所有者の特定には至りませんでした。
  2. 行政への相談: 次なる一手として、福山市役所(固定資産税課)に相談を持ちかけました。
  3. 固定資産税納税義務者へのアプローチ: 市役所にご協力いただき、固定資産税を納付している代表者(納税管理人など)宛に事情を説明した通知を送付してもらったところ、その方から連絡を得ることに成功しました。

 

この行政との連携により、多大な費用と時間がかかる「筆界特定制度」や「所有者不明土地管理人制度」を利用することなく、通常の境界確定測量を実施することができました。

ケーススタディ3:地中の時限爆弾。「越境排水管」の疑義を晴らせ!

 

最後の案件は、所有者不明といった「人」の問題ではありませんが、越境物という「物」の問題が判明した事例です。それは、「うちの排水管が、そちら(売却対象地)の敷地を通っているはずだ」という、隣接地所有者への聞き込みからもたらされました。排水管は地中のため直接目視不可の状況であり、売主様自身も「知らない(覚えていない)」という状況でした。

【解決へのアプローチ】

  1. 事実確認: 隣接地の方に協力してもらい、実際に水を流して排水経路を確認。排水管が側溝に接続されている場所の特定を行いました。
  2. 合意形成: 「もしも越境していたら撤去・解消する」旨の覚書を、売出し前に売主様・隣地所有者との当事者間で協議、締結しました。
  3. 慎重な工事: 解体工事の際、埋設箇所と思われる場所を慎重に掘削して確認した結果、排水管はギリギリのところで越境していないことが判明しました。そのため大きな工事やトラブルにも発展せず、無事に買主様へと引渡しを終えることが出来ました。

 

もしも越境の可能性について契約後に発覚していれば、解体工事のストップや契約不適合責任を問われる大問題になっていた可能性が有ります。時間的余裕のある事前調査だからこそ、冷静に事実確認と対策が行えたと言え、ここでも隣接地調査がトラブル回避に役立った案件でした。

 

結論:私たちの役割は「調整役」であり「司令塔」

 

これら3つの事例からわかるように、私たち宅地建物取引士の役割は、単に物件を案内し契約書を作成するだけではありません。

  • リスクの早期発見: 査定や売出前といった早期段階での調査を通じて、取引の障害となりうる問題を誰よりも早く発見する。
  • 専門家との連携: 土地家屋調査士や司法書士といった専門家と緊密に連携し、解決策を探る。
  • 関係者との協力関係: 近隣住民や行政とも協力関係を築き、円滑な取引の実現を目指す。

これらの役割を主体的に果たすことで、私たちは単なる「仲介者」から、取引全体の安全を司る「司令塔」へと進化することができます。

【重要】非弁行為のリスクと専門家の役割分担

ここで、宅建業者として絶対に越えてはならない一線があります。それは「非弁行為」です。

私たちが売主様と隣地所有者との間で権利関係の調整や交渉を行うことは、弁護士法に抵触する可能性があります。私たちの仕事は、あくまで事実調査と専門家への橋渡しです。

  • 私たちの役割: 隣地所有者の状況を調査し、境界確定が難航しそうな事実や越境物といった障害の有無を把握する。
  • 専門家の役割: その事実に基づき、法的な交渉や手続き(相続登記、代理人交渉など)を行う。

この「仕事のすみわけ」を徹底することが、お客様を守り、ひいては私たち自身を法的なリスクから守ることに繋がります。専門家としての高い注意義務とは、自らの職分をわきまえ、適切なタイミングで専門家にバトンを渡す判断力をも含むのです。

まとめ:プロの汗が、お客様の未来を守る

今回ご紹介した3つの事例は、それぞれアプローチこそ異なりますが、共通しているのは「問題が大きくなる前に、自ら動いて事実を掴んだ」という点です。

50年前の登記情報でも諦めずに近隣への聞き込みを行う(ケース1)。手詰まりの状況でも、行政への協力要請という新たなルートを開拓する(ケース2)。そして、目に見えない地中のリスクまで疑って検証する(ケース3)。

筆界特定制度や所有者不明土地管理人制度といった法的な解決手段も存在しますが、一般的な宅地取引においては費用と時間の面で現実的ではないケースも多々あります。だからこそ、私たち実務家が現場で汗をかき、地道な調査で「事実」を積み上げることこそが、高額な費用やトラブルを回避し、お客様の利益を守る最短ルートとなるのです。

相続不動産や所有者不明の空き家、空き地が増え続ける中で、私たち宅建業者には「どこまで事実を掘り起こせるか」という真価が問われています。リスクを先回りして摘み取るプロフェッショナルの仕事で、これからも安心・安全な不動産取引を実現していきましょう。

このサイトを共有する
不動産売買に関するお悩みなど
お気軽にご相談ください。
遠方の方はWEB会議LINEなど
オンラインでのご相談も可能です!
ご相談無料迅速丁寧に対応いたします。
受付時間
7:30~17:30
定休日
水曜日・祝日・第3日曜日